海外のバイヤーに見せる資料に「Halal certified」と一行入れるだけで、商談の温度が変わる——そんな場面が、ここ数年で確実に増えました。
ハラール認証は、宗教的な配慮というよりも「国際市場で通じる信頼の言語」。では実際、なぜ必要で、どのくらいの費用と期間がかかり、どう進めればいいのか。
本記事は、はじめての担当者でも迷わないように、現場目線でロードマップを整理した”最短の読書ガイド”です。
なぜハラール認証が注目されているのか
イスラム市場では、認証の有無が”参入許可証”になる場面が珍しくありません。とくに輸出や越境EC、インバウンドの受け入れでは、認証が「安心の前提」になりつつあります。
ハラール認証とは(JAKIM・MUIS・MUIとは)
第三者が、イスラム法に則っているかを審査・証明する仕組みです。輸出では、マレーシアのJAKIM、シンガポールのMUIS、インドネシアのMUIなど、相互認証に対応した機関の存在がカギになります。
日本国内の認証タイプ(A〜Dの使い分け)
- A. オーソライズド・ハラール認証(国際相互認証団体):輸出、食肉、医薬・化粧品、飲食・宿泊など広範囲
- B. ローカル認証:国内流通や飲食・宿泊・製造向け
- C. モスク/プライベート認証:在日ムスリム向け(公的な正式認証が必要な事業は除外)
- D. ムスリム・フレンドリー/ウェルカム:観光庁基準に基づく情報開示型
第三者認証の価値:販路と信頼
認証マークは、単なるロゴではありません。買い手にとっては「選定の初期条件」であり、売り手にとっては「交渉のスタートライン」。そしてHACCPやISO22000等の衛生基準と組み合わせることで、宗教と品質の両面から信頼が積み上がります。
ハラール認証の取得ロードマップ
- 現状診断・対象商品の選定:原材料・工程・混触リスクを把握
- 要件整理・文書準備:配合、清掃手順、表示、教育の整備
- 監査・審査:現地立会いを含む審査対応
- 認証取得→運用・更新:1〜2年ごとに更新と内部運用
目安期間:中小で3〜6か月/大規模・多拠点で6〜12か月。
費用の考え方(レンジ感)
| 項目 | 内容 | 目安費用 |
|---|---|---|
| 事前コンサルティング | 要件整理・書類作成支援 | 10万円~30万円 |
| 認証審査費用 | 監査・報告書・証書発行 | 15万円~150万円(認証費用は企業規模や製品の市場規模をもとに算出) |
| 年次更新 | 更新審査・文書確認 | 認証費用の100% |
※国・団体・対象品目・拠点数で変動します。
注意:「どこでも通じる認証」は存在しません。輸出先の相互認証(例:JAKIM/MUIS/MUI)に対応した団体を選定してください。
認証が開く販路
海外ではマレーシア、インドネシア、シンガポール、中東(UAE・サウジ)など。国内ではインバウンド向けの飲食・宿泊・観光で、認証や受け入れ体制が”選ばれる条件”になっています。
認証団体の選び方
- 対象国の相互認証対応があるか(JAKIM/MUIS/MUIなど)
- 審査・監査の実績、運用・更新の伴走体制
- HACCP/FSSC22000などの食品安全規格と連動できるか
まとめ
- ハラール認証は、宗教対応の枠を超えて「国際市場で通じる信頼の言語」
- 費用は100万円前後〜、期間は3〜6か月がひとつの目安
- 相互認証の確認と、衛生・品質基準との両立を押さえれば、販路は着実に広がる
- 次の商談で、まずは「どの国に、どの商品を?」から逆算してプランを描いてみてください
1980年武蔵大学卒。広告代理店・明通で営業・開発に従事後、フリーランスとして広告・メディア・IT分野で活動。2014年に一般社団法人メイドインジャパン・ハラール支援協議会を設立し、日本のムスリム対応を推進。近年はベジタリアンやヴィーガンなど「ユニバーサルフード」対応を提唱。農水省・観光庁・自治体の委員や専門家として多様な食文化と観光の架け橋として活動中。