【業界動向】インドネシア「ハラル義務化」が2028年へ延期 - 前回記事の訂正と、「期限が動いただけ」の意味
この記事でわかること
まず、前回の記事の訂正からさせてください。
第12弾で「2026年10月18日、インドネシアでハラル認証の義務化が発効します」と書きました。これは誤りでした。記事を公開した10月18日の時点で、義務化はすでに2028年へ延期されることが決まっていました。
なぜ誤ったのか
記事を書いたのは10月15日です。その翌日にあたる10月16日、インドネシア政府が移行期間の2年延長を発表しました。予約投稿していた記事はそのまま10月18日に公開され、延期を反映できないまま出てしまいました。
第12弾の冒頭には訂正の注記を入れ、本文は記録として残しています。
そのうえで、今回の延期が何を意味するのかを整理します。結論から言えば、期限が動いただけで、やるべきことは変わっていません。
📌 この記事でわかること
- 延期の正確な内容 ── 品目ごとに新しい期限が違います
- なぜ延期されたのか(政府の説明と、前回取り上げた「38倍の開き」の関係)
- 「認証が不要になった」わけではない理由
- 2年という猶予を、日本の事業者はどう使うべきか
発表の要点
インドネシア政府による移行期間の2年延長(2026年10月16日発表)
発表したのは経済担当調整大臣府(Susiwijono Moegiarso 同府秘書官)。政府規則第42/2024号を改正する形で実施されます。
- 飲食品および関連サービス:2028年10月18日
- 輸入飲食品(食肉処理場の製品・屠畜サービスを含む):2028年10月18日 ※相互承認協定の完了が条件
- 伝統薬・健康補助食品・化粧品・化学製品・遺伝子組換え製品など:2028年10月17日
- 一般用医薬品(OTC):2029年10月17日(変更なし)
- 処方箋医薬品:2034年10月17日(変更なし)
政府は延期の理由を「ハラール関連のエコシステムの準備状況を考慮した」と説明しています。業界団体からの意見を踏まえた判断だとされています。
「準備不足」の中身は、前回書いたとおりでした
この「準備状況」という言葉は、前回の記事で取り上げた数字とそのまま重なります。
第12弾では、CORE Indonesia の試算として「認証目標の達成には1日あたり約102,000件の発行が必要だが、実際の発行能力は1日約2,678件」という38倍の開きを紹介しました。制度が求める量に、それを処理する体制が追いついていない、という指摘です。
同じ記事で、現地の経済研究機関が制度の抜本的な見直しを求めていたことも書きました。延期は、その議論の結論として出てきたものと見るのが自然です。
つまり前回の記事で整理した「制度を回しきれていない」という診断そのものは外れていませんでした。外したのは「だから政府は予定どおり強行する」と読んだ部分です。実際には政府が現実を認めて期限を動かしました。
認証が不要になったわけではない
ここを取り違えると、2年後に困ります。
延期されたのは「期限」であって「義務」ではありません
- ハラール製品保証法(JPH法)そのものは有効なまま。義務は消えていません
- すでに取得した認証や、外国認証の登録(SHLN)が不要になるわけでもありません
- 輸入品の期限は相互承認(MRA)の完了が条件とされており、MRAの進み方次第で国ごとに扱いが変わり得ます
日本については、第2弾で取り上げたMRA(相互承認)がすでに完了しています。BPJPHと相互承認を結んだ日本の認証機関で取得していれば、その認証はインドネシアでも通用します。MRAが済んでいる日本は、むしろ有利な側です。
2年の猶予をどう使うか
「2年先なら、まだ動かなくていい」と考えるのは危険です。理由は3つあります。
- 発行能力の問題は解決していない ── 1日2,678件という処理能力が2年で38倍になるとは考えにくい。期限が近づけば申請が集中し、待ち時間は確実に伸びます
- 認証取得には準備期間が要る ── 原材料の洗い出し、サプライヤーからの書類収集、場合によっては製造ラインの分離。第13弾で取り上げた日本精化も、認証取得後に「製造可能数量に限りがある」としています
- 延期がもう一度あるとは限らない ── 今回は「エコシステムの準備状況」が理由でした。2年あれば体制は整っていきます。次は通らない可能性が高い
むしろ今は、締め切りに追われずに準備できる貴重な期間と捉えるべきだと思います。駆け込みの時期は審査も混み、支援も受けにくくなります。
具体的な進め方はハラール認証の取得ロードマップにまとめています。
HALAL ICHIBA の立ち位置
当店で扱っている商品は、JHA(日本ハラール協会)、NAHA(日本アジアハラール協会)、HFFIA など国内の認証機関で認証を受けたものです。このうち複数が、インドネシアのBPJPHと相互承認を結んでいます。
国内の飲食店で使う分には認証機関の違いを意識する必要はほとんどありません。ただ将来インドネシアへの展開を考えるなら、どの機関の認証かが意味を持ちます。商品ページに認証機関を明記しているのは、そのためです。
醤油の選び方は業務用ハラール醤油の選び方で、味の方向性ごとに整理しています。
シリーズで追ってきた流れ
- 第2弾:MRA(相互承認)締結(制度整備)
- 第7弾:義務化 第2段階が迫る(期限の設定)
- 第12弾:発効と、現地の見直し論(実行可能性への疑問)
- 第14弾(今回):2028年へ延期 ── 制度が現実に合わせて動いた
「期限を決める → 回らないと分かる → 期限を動かす」。制度が現実に追いついていく過程を、そのまま見ていることになります。インドネシアは世界最大のムスリム人口を抱える国です。この国の制度設計は、他国のハラール規制の参照点にもなります。
まとめ
2026年10月16日、インドネシア政府がハラール認証義務化の移行期間を2年延長すると発表しました。輸入飲食品の期限は2028年10月18日になります。
ただし延期されたのは期限であって、義務ではありません。認証が不要になったわけではなく、やるべきことも変わっていません。発行能力の不足という根本的な問題が残っている以上、期限が近づくほど不利になる構図も同じです。
そして前回の記事で誤った見通しを書いたことを、重ねてお詫びします。このシリーズでは今後も、間違いが分かった時点で訂正を出します。